last updated 1997/09/22
第130話(全130話)
エピローグ
エピローグ
闇の壁の向こうから、真っ直ぐに顔を向けて、マリカが歩み出てきた。
星読みたちはマリカの顔と目を見て「ん」とうなずき合っている。
フィンフィンはマリカに気づくと、慌てて飛び寄った。
〈マリカ! 無事だったの?〉
「ええ」
〈きみひとり? ピートは? ピートは一緒じゃないの?〉
「彼は、帰り道をみつけたわ」
言うマリカに、フィンフィンは〈そう。帰っちゃったんだね〉と淋し気に顔をうつむかせる
。「何で哀しそうにしてるの、フィンフィン。別にこれがさよならじゃないわよ。彼にはいつ
だって逢えるわ。彼が帰り道をみつけたっていうことは、あたしたちには新しい旅への道が開
かれたってことなのよ。ピートがあたしたちを呼んだら、あたしたちの新しい旅がはじまるわ
。それに備えていろいろ準備しなくちゃね。ちょっとだけの別れを悲しがってる暇なんかない
のよ、フィンフィン」
言うと、マリカは床に転がっているマスターの姿に気が付いた。
「あら、マスターったら、また機関停止状態なの?」
言いながら歩み寄り、跪いてマスターのハッチを開ける。暗証番号のボタンを押してメイン
・スイッチをオンにする。マスターの計器類がパッと瞬いた。ブゥンと電気のうなりがモータ
ーを回転させ、太陽電池のエネルギーがマスターの全身に行き渡って行く。マスターの蛇腹状
の手足が一度痙攣してから、生気を取り戻した。
「や!」
マスターが声を上げた。どうやら冷静沈着なロボットも自分の身の上に起こった出来事に驚
愕したらしい。
「私は機関を停止させてしまったのですか、姫」
「そうよ、マスター。何があったか憶えてる?」
「もちろんです。私は姫のために花を捜しに出掛け、そして・・」
マスターにはそこから先のことが思い出せないらしい。考えて、彼は結果から逆算しようと
思ったのだろう、マリカに尋ねる。
「ここはどこですか? われわれはいまどこにいるのです」
「ケダック城の地下さ」とパピロ。「すごいでしょ」
「ケダック城?」
「そうよ」マリカが応える。「あたしね、いま、バアグに逢ってきたところなの」
言われてマスターは激しくコンピュータを回転させる。バアグというのは幼い子供を躾ける
時に使う伝説の魔物であって、それと実際に出逢うことなど不可能である。なのに、どうやら
マリカ姫は本気でそう言っているらしい。ということは、どういうことなのか、とマスターは
懸命に考え、そして言った。
「理解不能」
そんななマスターに笑って、マリカはロボットに抱きつく。
「お帰り、マスター! あなた、回路不良から立ち直ったわねッ」
マリカの言葉にパピロが笑い、フィンフィンが笑った。ケンプはロボットになど関心がなさ
そうに大きなあくびをした。ワーターは気味が悪いから、早くここを出ようと、蹄で床を蹴っ
て、マリカに催促していた。
マリカの嬉しそうな抱擁を受けながら、マスターはやっぱり「理解不能」と繰り返していた
。
一行は長い階段を登って、ケダック城の中庭へと戻ると、そのままドンロンの甲板へと招き
上げられた。ゆっくりと星空を飛行して行くドンロンの甲板で、マリカとフィンフィンは星を
見上げていた。どこかこの星空の果てに、テラがあるのだろうか。だとしたら、いまそのテラ
からも、ピートは夜空を見上げてテオを捜しているかもしれない。
「ピート、あたしはここよ」
マリカが星に語りかけた。
その横でフィンフィンが静かに、歌を唄いはじめた。
眼下の草原で、森で、海で、山で、島で、すべての生き物たちがフィンフィンの心を受け取
ったかのように唄いはじめる。
テオが唄っている。
テラへと唄いかけている。
人々はこぞって家の外へ出ると、生き物たちの歌声に誘われるように夜空を見上げ、そして
微笑みをかわして踊りはじめる。
今夜は、月祭りの夜だ・・。
おわり
Back Number
presented by son@ch-teo.com
Copyright(C)1997 FUJITSU LIMITED.
All Right Reserved.